Nas シンフォニーホールを揺らしたヒップホップの夜

Nas with Symphony

ずっと夢見ていたNasのライブが、シンフォニーホールという特別な舞台でついに叶いました。あの夜の感動を、ゆっくり振り返ってみたいと思います。

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Nasのラップを生で聴きたかった

夏にチケットを取ってから、この夜をずーっと楽しみにしていました。Nasは昔から大好きなラッパーのひとりで、私の「いつか生で観たいアーティストリスト」にずっと入っていた存在です。

実はしばらく、Nasを聴かない時期もあり、あまり馴染みのないアルバムもいくつかありました。渡米して家族ができてから、生活スタイルや音楽の好みも少しずつ変わり、以前よりメロウな音楽を選ぶことが増えていて、特に、子どもたちを乗せて車を走らせる日常の中で、暴力的な表現も多いラップをかけるのは、ちょっとためらいがあったのです。

それでも、Nasの動向はいつも気にしていました。グラミーにノミネートされたときも、「おお、来た!」と密かに喜び、遠くから静かに応援していたものです。

そして2021年、『King’s Disease』で最優秀ラップ・アルバムを受賞したときは、本当にうれしかった。長い年月をかけて活動を止めることなく、ヒップホップという文化そのものを大切にしてきたNas。そんな彼の言葉の力が、ついに公式に評価されたようで、報われた気がしたのを覚えています。

子どもたちの成長とともに、ここ10年ほど、私も好きな音楽を自由に楽しめるようになりました。気になるアーティストや行きたいコンサートリストも、常にアップデートして楽しんでいます。なので、Nasがサンフランシスコに来ると知ったときは、迷う理由はありませんでした。

サンフランシスコの音楽の聖地へ

会場はThe Theater at Bill Graham Civic Auditorium(ビル・グラハム公会堂)。サンフランシスコの音楽文化を象徴するランドマークです。このエリアは、シビックセンターと呼ばれ、市庁舎、オペラハウス、シンフォニーホール、バレエ劇場、美術館など、美術、音楽、建築、行政のすべてが集まる文化の中心エリア。クラシックで美しい建築が立ち並び、街歩きにもおすすめの観光スポットです。この歴史的なステージで、オーケストラとの共演という特別な夜!

San Francisco City Hall
金色のドームがシンボル、シビックセンターの象徴的な存在 サンフランシスコCity Hall(市庁舎)
Bill Graham Civic Auditorium in San Francisco
数々の伝説的なライブやイベントが行われてきた音楽の聖地 The Theater at Bill Graham Civic Auditorium(ビル・グラハム公会堂)
Nas Illmatic Tshirt

私は、7時の開場とともに入場し、まずはマーチスタンドへ直行。念願のIllmaticのTシャツを手に入れました!喫煙エリア、いくつものバーやソファがあり、軽く飲みながら開演までゆったりと過ごしました。

今回私は一人だったのですが、周りには、一人参加(しかも少し年配の方も)のファンもちらほら。意外とそういうファンも多いのですね。チケットを購入する際、一人席で探すと席の選択肢がほとんどなく、バルコニーセクションとなりましたが、ステージ全体を見渡せてちょうど良い距離感でした。


Illmaticの世界が目の前に

いよいよ、(予定より30分ほど遅れて)ショーがスタート。前半はBerkeley Symphonyとの共演です。クラシックの楽団が演奏を始めると、タキシード姿のNasがステージへ!!その光景だけでもう胸が熱くなりました。

「N.Y. State of Mind」「The World Is Yours」など、当時の名曲が続き、1994年の傑作『Illmatic』の世界が目の前に広がります。アルバム発売から31年経った今でも、あのビートが鮮やかに響いていました。

曲の合間には、シンフォニーの静かな音を背景に語るNasの言葉。その一言一言に重みがあります。指揮者や楽団へに敬意を込めながらも、堂々と自分のラップを貫くNas。さすが!

シンフォニーとのコラボとは、どんなものになるのか?と思っていたのですが、実際に聴いてみると納得。キーボード、ギター、ドラム、DJが、いい具合でオーケストラと響き合い、クラシックの響きとライブバンドのエネルギーが見事に融合するんです。特にDJがビートを絶妙に刻み、その上でラップするNasの姿がもう本当にかっこいい!!!

「Life’s a Bitch」ではAZが登場し、会場は総立ち。二人の間に流れる深い絆が、音に乗って伝わってきました。

後半はシンフォニーが下がり、バンド(キーボード、ギター、ドラム)とDJというシンプルな構成に。なるほど、こういう展開になるとは。Nasがソロで懐かしい曲を次々と繰り出し、会場の熱気は一気に高まります。

Nas Concert
シンフォニーから一転、バンドとNasの熱が会場を揺らす。


ヒップホップの真髄を見せた迫力のステージ

再び、AZが戻ってきて、「Affirmative Action」を披露。当時の黄金コンビを思い出させる息の合ったパフォーマンスに、客席から大きな歓声が湧き上がりました。

ラストは「One Mic」「If I Ruled the World」!
ファン全員が立ち上がり、声を合わせて歌う光景は圧巻!充満するマリファナの香りが、90年代のストリートの懐かしい空気を感じさせ、まるでセットの一部のようでした。情熱に溢れた、優雅な振る舞いの中にもストリートの息づかい。Nasのラップには、長い年月を超えてなおも変わらないヒップホップ魂が宿っていました。

Nas, ストリートからシンフォニーホールへ。長い年月をかけて、自分のスタイルを貫き続けてきたその姿に、心から敬意を表したいです。

それにしても、、、タキシードでラップするNas、最高!!!

ヒップホップは、こんなにも美しく、深いもの。
音楽と記憶が重なった、忘れられないサンフランシスコの夜でした。

Nas with Symphony
心に響くライブのあと 喜びを分かち合うファンたち
San Francisco City Hall
コンサートの余韻に包まれながら眺める幻想的な光景
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