手話が共通言語のスターバックスがあるのをご存知ですか? 現在世界に5店舗あり、その5つ目のお店が日本にあります! 今回の日本旅行中、ぜひ行ってみたかった場所の一つで、とても素敵な場所でしたので、ぜひ紹介したいと思います。
サイニングストアとは?
世界で5つ目のサイニングストアは、『スターバックス サイニングストアnonowa国立店』です。ここには、日本手話(JSL)を使用できるスタッフがいて、聴覚障害のある方や手話を学んでいる方に対応しています。店内には、STARBUCKSを指文字(ASL:アメリカ手話)で表現した大きなサインがあります。指文字のアルファベット表現は国によって異なりますが、一緒に行った次女は、以前アメリカ手話(ASL)を学んでおり、この指文字がわかると喜んでいました。
サイニングストアでの体験
オーダーは、手話(JSL)を使えるスタッフに手話で注文ができるほか、タブレットに向かって話すと音声入力システムで文字に変換され、それがスタッフに伝わる仕組みや、指差しで商品選びからカスタマイズまでできるメニューシートや、筆談具などのツールも用意されているそう。私はメニューシートの指差しでラテと抹茶スコーンを注文しましたが、同時にスタッフは私の口の動きも読んでくださっていたようです。 カリフォルニアから来た旨を伝えたら、「わざわざアメリカから来てくださったんですね!」という手話をしてくれました。
アートとサイン言語の美しさ
そして、店内を彩るアートがまた素敵なんです! アーティスト、門 秀彦さんによる『Talkative hands(おしゃべりな手)』という作品で、愛情あふれる指の動きが描かれています。見ていると、すぐにでも使ってみたくなるような、わかりやすい表現がされています。色使いといい、表情や表現の仕方が心温まる素敵なアートだと思います。
アーティストの門 秀彦さんは、手話をモチーフにした作品や、手話をする動物のポップなイラストを数多く描いています。ろう者の両親を持つコーダであり、手話や言葉では伝えきれない思いを表現するために、幼少期から絵を描き始めたそうです。コーダ(CODA)とは、Child of Deaf Adultsの略で、聴覚障害を持つ親を持つ、聴覚に障害がない子どもを指す言葉です。彼の作品は、アートとしての美しさだけでなく、ろう者と聴者をつなぐ橋渡しとしても高く評価されています。また、手話やろう文化への理解を広めるための活動を通じて、多くの人々に愛されています。
手話と映画・ドラマの世界
コーダといえば、2021年の映画『Coda(コーダ)あいのうた』では、コーダが主人公として描かれていて、アカデミー賞の作品賞を受賞した素晴らしい映画でした。その10年ほど前、私は娘たちと一緒に『Switched at Birth(邦題:スイッチ 運命のいたずら)』というドラマを見て、手話にとても興味を持つきっかけになったのでした。このドラマはアメリカで大ヒットし、シーンの大半でアメリカ手話(ASL)が使われていて、観ていると、よく出てくるサインを少し理解できるようになりました。その後、次女は手話に興味を持ち、クラスを受講して、手話が少しできるようになりました。
このドラマに登場するエミット(Emmett)がいいキャラクターで、甘いマスクに優しそうな瞳、私は大ファンでした! エミットのお母さん役を演じたマーリー・マトリン(Marlee Matlin)も、とても綺麗で、魅力的な女優さんです。彼女は『Coda(コーダ)あいのうた』でも主人公ルビーの母親役を演じていて、変わらぬ美しさと素晴らしい演技力を披露していました。
ドラマ『Switched at Birth(スイッチ 運命のいたずら)』では、聴者と聴覚障害者がさまざまな困難を乗り越えて生活していく様子や、普通の学校と聾学校でのティーンの学校生活や恋愛の様子が描かれていて、とても興味深かったです。一方、映画『Coda(コーダ)あいのうた』は、聴覚障害のある家族と、その中で唯一聞こえる娘ルビーが主人公の感動的な映画。家族を支えながら自分の夢を追いかける姿が描かれていて、特に、音楽と手話が共存するシーンが最高でした。ラストシーン、耳が聞こえないお父さんが、ルビーの美しい歌声を彼なりのやり方で愛情いっぱいに受け止めようとするところでは、胸がいっぱいになり、涙が止まらなかったです。
話は外れてしまいますが、もう一つ、映画『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』(Sound of Metal)。これはアマゾンで独占配信された直後、話題になっていたのですぐに観ましたが、素晴らしい映画です。その年のアカデミー賞にいくつもノミネートされていましたので、ご覧になった方も多いかもしれません。ドラマーの主人公が、どんどん聴力を失っていく怖さと絶望感、そして現実を受け入れていく姿が痛いほどによく描かれていました。個人的に、とても心に響いた映画でした。
実は私も生まれつき、片耳(右耳だけ)が少し難聴です。「少し」と言ったのは、聞こえない音がいくつかの高音域のものだけの、「高周波数の難聴(high-frequency hearing loss)」だからです。音は低い音から高い音まで幅広い周波数で存在しますが、「高周波数の難聴」では、特に高音域(higher pitched sounds)だけが聞き取りにくくなります。具体的には、女性や子どもの高い声や、「s」「sh」「th」のような高音域の子音が聞き取りにくいです。
ありがたいことに、左耳は全く異常なく、全ての音が聞こえるので、普段の生活では大きな問題なく過ごせています。ただ、右側で囁かれたりすると聞こえづらいので、いつも人の右側に立つなど、工夫しながら生活しています。このような個人的な事情もあり、この映画はグッとくるものがありました。普通に音が聞こえるって、それだけでも感謝すべきことなんですよね。
サイニングストアでの特別なひととき
マグカップを売っているコーナーを見ていたら、先ほど注文を取ってくれたスタッフの方が、手話を使って話しかけてきてくれました。彼女がおすすめしてくれて、日本限定のTOKYOマグカップや指文字入りマグカップ、エコカップを記念に購入しました。難聴である彼女は、私の話している内容を読み取ってくれて、色々とコミュニケーションができたので、とても楽しいひとときになりました。マグカップは毎日、思い出しながら使っています!
彼女は、アメリカ・ワシントンD.C.にある世界で最初のサイニングストアに、いつか行ってみたいと話してくれました。そこは、ガローデット大学(聴覚障害者や手話を使う人々に特化した大学)のすぐそばにあり、大学に通う学生や手話を使う人々が働き、気軽に訪れることができる環境が整っているそうです。素晴らしい取り組みですよね。
ガローデット大学は、Netflixのリアリティショー「デフ・ユー(邦題:ろう者たちのキャンパスライフ)」の舞台にもなっています。さまざまな聴覚の障害の度合いや育ってきた環境も違う学生たちが、関心事や悩みを語ったり、手話でデートに誘ったり、リアルな学生生活が描かれていて、まさに青春のひとときという感じ。彼らの何気ない言葉に、思わぬところでハッとさせられることもあったり、とても興味深い作品でした。
嬉しいことに、帰る時「スターバックス」のサインを教えていただきました! 両手の親指、人差し指、中指を顔の横にかざします。そう、まるでスターバックスのロゴに描かれた人魚のように! とても明るくて親しみやすいお二人と一緒に、スターバックスサインで写真を撮らせていただき、素敵なひとときを過ごしました。
手話の世界に触れて
こうして、サイニングストアnonowa国立店のように、実際に手話を身近で体験したり、映画やドラマの中で手話に触れたりすることで、今まで知らなかった手話の世界が広がっていくように感じます。手話を見たことや使ったことがない人でも、手話の美しさや、手話を使う人々の文化に共感し、より深い理解を持つきっかけになれば良いなと思います。
ここは、聴覚に障害を持つスタッフが働きやすい環境を提供しているだけでなく、手話を使う人々にとっても、手話を使う楽しさや、コミュニケーションの喜びを感じさせてくれる場所だと感じました。いくつかのサインを覚えて、次回訪れるときには、サインでオーダーに挑戦するのが楽しみです!
皆さんも機会があれば、ぜひ一度足を運んでみてくださいね。
スターバックス コーヒー nonowa国立店
国立駅/北口(JR東日本)徒歩2分
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